2017年06月11日

初めの一歩 〜射撃道具一式〜

回は、ハイキャパの項でサラッと書いた、ベルトとホルスターについて。
 世の中にはいろんな種類が存在しますが、ことシューティングに有効な品物と選び方など、その解説を。


エアガンに初めて触れる人が買うなら?
 予算がそんなにないとか、やってみるけどすぐ飽きるかも…という人なら『SⅡS フリーサイズ ヒップ・ホルスター』というのがオススメです。
 他にも有名ミリタリーショップのトルーパーズさんで販売されている(マック堺さん御用達)『ライブラ オールインホルスター』も良いです。

 理由はまず、拳銃がそれなりの固定テンションで収まること。
そもそもホルスターとは発射状態になった銃を納める、日本刀で言うところの「鞘」なので、取り出しやすいことがとても重要です。そうなると、鞘の中で刀がガタガタ暴れてしまうような鞘だと、咄嗟に掴んで抜く柄の部分もガタガタしてしまい、抜刀しづらいだろうことは想像できると思います。
拳銃におけるドローも同様で、咄嗟に掴むグリップの部分がガタガタしていてはうまく引き抜けませんし、運よく抜けたとしてもターゲットに照準がピタリと合うことはまずないでしょう。何故なら、照準というのは銃がしっかりと手に握られている前提で的に弾が当たるように調整されているから。
 次の理由は、特定の拳銃でなければ収まらないということがなく、使用する銃をほとんど選ばないこと。
SⅡSさんのはデザートイーグルはキツイんですけれども(笑)、特別にコンパクトだったり変わった形状の拳銃でもなければ、貴方が選んだエアガンの大抵の物は収まると思います。自動拳銃から回転弾倉式拳銃、なんでも入ります。入った上である程度はガタつかないと。
なのでエアガン射撃競技にイチオシの東京マルイ・ハイキャパ以外にも、グロックだったりH&K・USPだったりコルト・パイソンだったり、色々なエアガンでホルスター・ドローを楽しめるワケです。もちろんショップさんで実際に確認されることをオススメしますが…。
なぜこの二種がなんでも収まるホルスターなのかというと…理由は簡単で、伸縮性のある布製かつ内側に骨となる厚紙?が入っているから。物を詰め込んだ袋が外側にどんどん広がるように大きな銃には膨らんで、小さい銃には全体の形状を維持するため内側に仕込んである厚紙?のテンションで、拳銃を固定します。
この布製ながらホルスターの形状がぐしゃぐしゃにならないように内型があるタイプでは、引き抜く際に変形したホルスターが銃に引きずられて中々離れてくれなかったり、逆に収める際に銃口がうまいこと入らずに銃を落としたり暴発させてしまったりということが防げる点でも高性能です。
 最後に、この二種は標準的な「ヒップホルスター」であり、身体の真横に固定できるタイプであること。
別にお尻につけるという訳ではなく、腰の部分に日本刀よろしく取り付けることができるタイプのホルスターをヒップホルスターと呼びます。利点は、普段は邪魔になりにくい部分かつ取り出す際には咄嗟に手の届きやすい部分でもある腰に拳銃を携帯できること。
他に脇の下や太ももにつけるホルスターもありますが、拳銃射撃競技全般ではその手のホルスターは禁止されている場合が多いです。収まっている時や引き抜く際の銃口の向きやドローの際の抜きやすさなどを考慮し、ルールで明確に定められています。また身体の真横にホルスターを取り付けることで、ドローの際に起きる可能性がゼロではない「暴発」の際にも、自分の身体の安全を確保できます。
なので標準的な腰着けのヒップホルスターで、かつ「身体の真横」に取り付けやすいこの二種なら、そのまま競技に問題なく出場することができます。

 以上の理由で、他にも格安なホルスターも沢山ありますが、こと拳銃のドローに向く(と断言できる程度に自分が使ったことがある)ホルスターはこの二種類になるワケです。
それにこれらは競技専用のベルト以外にも、普段使いの布製革製ベルトやより太くてしっかりした作業ベルトにも簡単に取り付けられますし、つまりベルトすら選ばないというオールラウンドなホルスターと言えます。
また、射撃競技ではほとんどの場合、収めた拳銃を完全固定するロック機構を使わなくてもよいとルールに定められていますが、この二種はボタン留めのベルクロループで止める形式なので、それを取り外してしまえば、より早く確実にドローすることができるようになります。逆に、競技時以外の携帯や保管の際には、このベルクロループで銃を固定しておけば落ちませんし、傷つきにくくなるでしょう。


エアガンをバリバリ撃ってる自分はそんなので納得できない!という場合
 または前述のホルスターからのステップアップを考えている方は、ぜひエアガンショップの超有名店ホビーショップ・フロンティアさんなどで取り扱っている『サファリランド(Safariland)』のホルスターを試してみると良いかもしれません。
なんと言っても本場シューティングスポーツ御用達の道具ですし、プロ選手にも愛用されているとなれば、悪い理由を探す方が難しいと思います。
 個人的のオススメするのは、もっともドローしやすい『サファリランド 5198 オープントップホルスター』になります。
 理由は簡単で、前述の通り「しっかり銃が固定され」「各種拳銃サイズが選べて」「腰にしっかり取り付けられること」という三点の他に、カイデックスという樹脂で出来ているため抵抗が少なく引き抜けること、ネジ部分の締め具合で固定テンションが簡単に調節できること、別売オプションでベルトに取り付ける方法が何種類か選べること、等あげればキリがないくらい多くのメリットがあるからです。

 他に『ブラックホーク(Blackhawk!)』の各種ホルスターも十分に競技向けです。
「セルパ(Serpa)」というロック機構が特徴的な樹脂製のホルスターなのですが、そのロック機構は厚紙一枚を工夫すれば(要検索)簡単に無効化できるので、ドローの際により速く銃を引き抜けるようになります。
また比較的安価で、ミリタリーショップで取り扱いがない場合が皆無で、どんな所でも入手可能というのが他社にはないメリットです。それ故、日本のエアガン競技でも使用者が圧倒的に多いです。
また、個人的にオススメの機種にもなるのですが、前述のセルパ・ロックが最初からついておらずネジを締め込むテンションだけでしっかり銃を固定する「スポーツスター」という機種があり、各種拳銃用のサイズも販売されているので、安価かつホルスターに求められる三項目をしっかり抑えた優良ホルスターと言えます。

 また完全に競技向けホルスターともいえる『ブレードテック(Bladetech)』のホルスターは、入手できるのなら強力なホルスターのひとつです。
入手難の理由は、まず値段が前記二つよりも圧倒的に高いことの他に、取り扱い店舗の少なさがあります。かつてはメーカーで職人さんがひとつひとつ手作りしていたとも言われており、現在のように廉価ラインナップがあったりもしなかったので、完全なる”本物志向”の方向けのホルスターでした。現在では比較的取り扱い店舗も増え、それによって使用者が増えた結果、ある程度は安定供給(=通販で買える)されるようになりました。
ただやはり玄人向けであることは変わりなく、日本で入手できるのはハイキャパ(1911)用など、メジャーな競技向けエアガン用のみとなり、拳銃の選択肢は狭まります。また各銃専用設計にすることで銃の固定を完全にしている関係上、同じ拳銃でもエアガンメーカーが違えば収まらなかったりガタついたり、バレルの長さなどの対応カスタマイズの許容範囲が狭かったり、ホルスターのベルトへの固定方法があまり選択できなかったりと、競技射撃である程度レベルが高い競技者の方でないと生かすのが難しい代物でもあります。
しかし、それらを乗り越えて完全にモノにできれば、実銃エアガン問わずトップクラスの選手が愛用するのも頷ける格別のドロー性能を発揮し、異次元のスピードを手に入れられます。
理由は、書いた通り「各拳銃専用設計」であること。収める際も引き抜く際も一切ガタなくカチッと行えますし、ネジでテンションを調整すれば一切の抵抗感もなくスパッと銃を引き抜けるようになります。それは即ち、後述するレースホルスターの性能にも匹敵する究極なものです。


でも競技選手は皆、レースホルスターっていうのを使ってるみたいだけど
 仰る通り…実は競技によってはヒップホルスターを使用する「タクティカル部門」の他に、完全無制限の「オープン部門」として、このレースホルスターを使用できる専用部門が設けられている場合がほとんどです。
 正直言って、それくらいカテゴリー分けしてもらわなければ、このレースホルスターとヒップホルスターの差は大き過ぎ、とても勝負にならない=競技として成立しないくらいの性能差があります。

そんで、そもそも『レースホルスター』って何?
 Raceの名が示す通り、競技専用かつコンマ数秒単位を争うオープン部門で勝利するためのホルスターです。
 特徴は拳銃を固定する方法にあり、ほとんどの機種は拳銃のトリガーガード(トリガーの周囲にあるフレーム枠)の部分に、ツメを引っ掛けたり両側から挟んだりなどして固定しています。こうすることで、銃とホルスターの接点が最小となり、抵抗感もなくなれば、銃の周囲に邪魔になるホルスター外殻も無くなるので、ロック解除の瞬間に拳銃が自由になります。上に振り上げるのも左右に振り回すのも容易です。
 即ち、ドローから構えに入るの際に最も邪魔になるホルスターという存在を極小にした物が、レースホルスターとも言えます。
 え、ホルスターがあるからドローができるんじゃないのか、って? …いやいや、でもホルスターって本当に邪魔なんですよね。何もない空中に浮かんでいる拳銃をパッと掴んで撃った方が本当は速いに決まってるんです。さらに言えば、構えた状態から咄嗟に撃った方が速い(笑)
 でもルール上それが出来ないので、「最もホルスターからかけ離れたホルスター」である、レースホルスターの出番というワケです。

じゃあ、一番良いホルスターってレースホルスターなんじゃ…
 その前に、ひとつ伝えておかなくてはいけないことがあります。
 エアガン実銃問わず、競技中に拳銃を落としたら即座に失格となります。
 それにホルスターのそもそもの存在意義は、拳銃を安全に携帯するための安全装置という点にあります。つまりホルスターに収まって入れば安全だし、丁寧に引き抜けば安全な状態のまま射撃体勢に入ることができるというワケです。それに愛用の拳銃をボロボロ落としてキズをつけたいという方はそうそう居られないかと思います。

 なので、レースホルスターは既に書いた通り、競技においてコンマ数秒でも速くなければ競技に負けてしまうような方にのみオススメします。

 確かに初心者〜中級者からレースホルスターを使っても楽しいと思いますし、タイムも比較すれば速くなると思いますし、練習するぶんには銃を落としても練習中止になるわけでもないですし、何より簡単にドローできるので楽と言えば楽です。
 ただ、その内、その銃とそのホルスターでなければドロー出来なくなると思います。道具を変えた途端、初心者以下に逆戻りする可能性もあります。実際に、エアガンではそういう選手が結構います。愛用のレースホルスターなら速いのに、ブラックホークにすると途端に遅くなる…という。

 また、通常のホルスター以上に「暴発」の危険性が高まります。エアガンなら痛いで済む話も、実銃では死者が出ます。それほど危険な行為ですので、もちろんルールで暴発は即失格と定められています。第一、拳銃をスポーツとして楽しんでいるのに、不意に発砲されて恐怖を感じない人間はいないと思います。無為に他人に恐怖心を植え付けたいという方はそうそう居られないかと思います。

 ホルスターのロック機構は安全を担保するための存在です。ヒップホルスターは銃を完全に覆うので暴発の危険は極小です。
 トリガー部分のみを覆うレースホルスターはその安全担保を使用者のみにほぼ委ねる形で成立する極限の道具とも言えます。
 故に、使用者が競技者として成熟し、緊張感の中でも完全に安全な管理とドローを行えなければ、即座に危険な道具に変わります。

 当の筆者もレースホルスターを使用していた競技会場にて、競技準備中に拳銃を落としてしまい、審判の裁定を受けたことがあります。
 日々練習をしていても、競技となると人間は「緊張」や「萎縮」という難敵と戦わざるおえず、安全管理はおろそかになりがちです。
 それならば、自分の実力以上のギリギリまでマージンを削るより、万全な状態を道具に頼ることで維持する、というのも方法論のひとつだと思います。
 逆に言えば、圧倒的な練習量で道具の不備をカバーする、ということも方法論ではあるのですが…。


つまり、これから競技射撃を始めたい!という方にオススメのホルスターは?
 ブラックホークのスポーツスターが一番じゃないでしょうか…安いし手に入りやすいし抜きやすいしベルト選ばないしブランド物だし。


んで、ベルトは何を選べば良いの?
 ぶっちゃけちゃうと『ミルフォース(Mil Force)』の『IPSC アウター&インナーベルトセット』です。
 理由は、「ドローの際に発生する、ホルスターをズラす力に負けない硬さがあること」と「インナーとのベルクロ固定によりがいつも同じ位置に巻ける」ことなど。

 普通の革製布製ベルトにホルスターをつけてドローしているとわかると思うのですが、ドローするたびに位置がビミョーにズレていきます。何回もやっていると”さっきまでの位置に銃がない”ということもありえます。また、ホルスターごと銃がグラグラガタガタすることもあります。ひとえにベルトが柔らか過ぎる薄過ぎるのが原因です。

 このIPSCベルトは値段の割に(5〜7千円程度)高いパフォーマンスを発揮し、トップ選手でも愛用者がいるくらいしっかりした競技用ベルトです。 
 しっかりしているのはベルト内側に金属の帯が入っているからで、これによってベルト本体がたわまず、よって取り付けられたホルスターもガタグラつくことなく常に同じ位置に止まり続けます。同じ所に手をやれば同じ所に銃があり同じようにドローできる(理論上)というワケです。
 またベルクロ(マジックテープ)のメスがついたインナーベルトというズボン側に通して巻くベルトを使うことで、ホルスターが取り付けられた硬いアウターベルトを好きな向きで巻けます。普通の革製布製ベルトはバックルがあってそれがお腹の前につきますが、IPSCベルトにはバックルがないので、合わせの部分をお尻側に向けて巻くこともでき、お腹周りに別売のマガジンポーチをつけたりするのも容易です。もちろんそれらもグラつかずにしっかり付きます。
 この形式のお陰で、インナーベルトに印をつけておけば、好きな位置にいつも同じようにホルスターをつけることが出来るようにもなります。
 それに練習中や競技中に、ちょっとトイレ、という際にも、アウターベルトだけ簡単に取り外して身軽に(そして部外者に不審に思われず)出掛けることが出来ます。競技会場に移動する際も、インナーベルトだけ巻いておき、アウターベルトを小さく巻いてバッグにしまって運ぶなんてこともできます。
 その他にも、この絶妙な”幅の細さ”により、大抵のヒップホルスターやレースホルスターが取り付けられるので、将来的に別のホルスターに変える時にもベルトは買い換えずに済みます。ベルト版のSⅡSヒップホルスターのような代物で、もちろんそれとの相性も最高です。

 実はこの他にもサファリランドから革製の競技用ベルトが販売されていたりしますが、サファリランド製品との互換性を最優先とする設計(ベルトの太さやオプション用の穴等)のため、ほぼサファリランド製品しか取り付けられないというのがデメリットです。
 サバゲー用のタクティカル系ベルトにも使えるものはありますが、IPSCベルトのような汎用性がなかったり、硬さがいまひとつだったり、ホルスターの取り付け方法が特殊(モレー等)だったりと、元々サバゲーマーであるというのでなければ選択する理由は薄いと思います。
 また完全たる実銃競技用のベルトも日本で入手できたりしますが(筆者が愛用するDAA・プレミアムベルト等)、正直にいうとIPSCベルトと構造そのものは全く同じだったりするので”本物志向”な方でもなければIPSCベルトが最高の選択肢たり得ると思われます。
 逆に言えば、IPSCベルトはそんな完全競技用ベルトの最高コストパフォーマンス版だと言えるワケです。これを買っておけば間違いない、と断言できるベルトかもしれません。


結論 オススメのホルスターとベルト (これを一般的には”リグ”と呼びます)

 IPSCベルトにブラックホークのスポーツスター…これが勝利のカギだ!

 とは言いつつも、一番いいのは全部買って全部試した上で気に入って使いやすいのを選ぶことです!
 某フレンズほどではないですが、どれも個性的なフレン…ホルスターやベルトなので、試す内に利点が見出せてくると嬉しい気持ちになります。
 もちろん、出費は相当なものになりますが…(下手すると収める銃より高額な商品も)
 オススメする上で一番重要なのは、拳銃射撃におけるドローの基本となる「身体の真横(安全な位置)からしっかり銃をグリップして引き抜き、最も命中しやすい構えを取る」という動作をサポートしてくれるリグであること。なので”飛び道具”的に素早いドローが出来るとかそういうものではないことをご了承ください。

 (ぶっちゃけ素早いドローというならニシヤマファクトリー・隼ホルスターが世界一だと思います。だって抵抗ゼロなんだもん。各種アングルオプションもあってそれこそ”空中の銃を取り上げて構える”ことが出来る唯一のホルスターだと思います。ていうかあれはもはやホルスターなんてシロモノじゃない)

 蛇足になりますが、ドロー練習を繰り返しドローを極めると、どんなホルスターを使っていても、素早いドローが可能になると思っています。
 その域に達すると、もはやレースホルスターとかヒップホルスターとかロック形式はどうでもよくなり、重要になってくるのは「どの位置に銃のグリップがあるのか」だけになると考えられます。
 要するに(別項で書く)「如何にバット・グリップしないで銃を構えられるか」ということだけに神経を注ぐことになり、ホルスターは腰に銃をブラ下げるだけの道具であり、別になんでもよい、という風になってしまうということです。
 そうなるとレースホルスターかヒップホルスターかは出場する競技のルールで選ぶだけのことになり、ロック形式もどうでもよいのでスポンサーから無償提供される商品を使うようになり、でもグリップ位置は変えたくないので自然と取り付け位置は身体の真横に、アングルオプション等で本体角度を色々変えることも不要になり、ついにはホルスターの形が違うだけでドローはいつも同じ速さで全く同じく出来るようになる…

 米国における実銃拳銃射撃競技の三強……マックス・ミッチェル、KC・ヨセビオ、BJ・ノリス、この三人は既にこの高みに達していると言えるでしょう。
 (いやレースホルスターの方が抜きやすいに決まってるんですが、タイムを見る限り最高速度に関しては別にそんなことはないんじゃないかと)

 自分もいつかはそんな領域を一瞬でも感じ取ってみたいですねぇ…。
  


2016年05月05日

”拳銃の王子” ハイキャパ

「グロックやCZもいいけど、オレはやっぱりガバメントだなぁ」

 そう言ったのは、エアガンよりもどちらかと言えばクルマやバイクが大好きな友人だった。
 工学系の道に進んでいた彼は、この完成された拳銃の工学的な……というかいわゆる「ものつくり」としてのスバラシさに心惹かれていたのかもしれない。
 自分の好きなキャラクターの持ち物は別として、男が憧れる武器として最も力強く美しく心惹かれるという。

 その憧れの存在こそが”拳銃の王様” コルト M1911 ガバメント なのだ。

 当時の筆者といえば、とある漫画の影響で CZ75 にクビッタケだったので、「世界最強のコンバットオート」ではないコルト・ガバメントにはあまり惹かれるものはなかった。
 なにより小柄であった自分の手にあまる、あのアメリカンサイズのグリップが気に入らなかった。
 あまりに大き過ぎ……いや筆者の手が小さ過ぎて小指がまわしきれず、またトリガーレングス(親指の付け根からトリガーを引く人差し指までの長さ)さえも当時はあまりに遠過ぎた。そう、人差し指で引き金が引けなかった。
 その上、しっかり握りこまなければ解除されないグリップセイフティなどというCZにはない”余計なもの”がついているのが保守的というか安全主義的で、とてもプロフェッショナルが認めるツールとは思えず、先鋭的で危険な物ほど玄人好みだと勘違いしていた当時はコイツを骨董品か何かとしか思えなかったのだ。
 なにより実銃での装弾数はたった7発。お前はリボルバーか? CZはその倍は入るのだ。しかも当時すでに45口径ラウンドノーズよりも殺傷力の高い各種9mm弾が報道されていた時期でもあり、総火力においても時代遅れだったこの”かつての王様”に尊敬の念を抱くことなどなかったのである。

 時の流れは人間を成長させる。成長とはすなわち知恵の獲得でもある。
 つまり無知な少年も、時間のお陰で、それなりにモノを知る大人に成長できるのだ。

アガンから離れ久しく知らぬ間に、東京マルイ社は世界企業へと成長を遂げていた。

 そりゃあれだけ優秀な製品を作っていれば当然である。それに魅せられた当時の子供が大人になっても愛好し続けていたとすれば、売り上げは必ず右肩上がりになるのだから。小遣いはバイト代に変貌し、また小遣いに戻るとしても……売り上げは莫大なものになるだろう。

 そしてもう一つの流れがあった。
 工業製品には必ず「特許」というものが存在し、それは必ず失効するものである。
 実銃の世界では、あのコルト・ガバメントが下野し、そのクローンが大量に生まれた。

 日本においてはほぼ1社のブランドバッチ商法によって保たれていたその王権は、実銃の革命によって変化が起きていた。
 あらゆるメーカーがこぞってコルト・ガバメントを販売し始めたのである。

 その最後発が東京マルイ社だったと言えるだろう。悪い言い方で言えば後出しジャンケンである。
 無論、他社を研究したとなれば、ただ素直にベーシックなモデルを出すハズがなかった。
 あのベレッタM92Fですらカスタムモデルだった。グロックだって17ではなくコンシールモデルのグロック26から始まった。

 そして東京マルイが満を持して発売したのは”拳銃の王様の息子”だった。

 実銃の世界においても、やはり装弾数が足りないことは周知の事実だった。そして操作系の設計があまりに古いため、射手に応じてカスタマイズされるのは当然だった。
 ならばメーカーとして最初から仕上げたモデルを販売してはどうか。そう考えたのがガバメント・クローンを製造していたメーカーたちだ。
 彼らは一列の弾倉を二列にすることから商売を始め、レバー類を大型化エルゴノミック化するだけでは飽き足らず、オリジナルデザインのフレームまで手を染めた。つまり骨格レベルから生まれ変わらせようとしたのだ。
 そうして現れた”ガバメントの息子たち”は、親とは似ても似つかない姿だったが、正しくその王位を受け継ぐにふさわしい能力を備えていた。
 特に競技射撃で目覚ましい結果を残した複列弾倉タイプ……通称”ハイキャパシティ・ガバメント”はエアガンでも早期から競技射撃で人気のモデルとなった。
 コンペティション、セルフディフェンス、ミリタリーユーズ……そして保守的なコレクターまでも魅了したそれらの”拳銃の王子”たちは、日本のガンマニアまでも魅了してやまない存在となったのである。

 現在、日本のコンペティティブ・シューターたち(つまり達人級エアガン競技者)の手に握られているのは、ほぼ全てこの”拳銃の王子”をモデルにしたエアガンである。

 その偉大な王子の名は、東京マルイ ハイキャパ5.1 ガバメントモデルという。

 つまり、東京マルイは限りなく実銃に近いが、この世に存在しないガバメントをモデルアップしたのである。

 確かにあらゆる所が息子たちに似ているのだが、そのどれにも当てはまらないため、実銃メーカー及びブランドバッチ供給を受けている他社から訴えられることもないだろう。うまいやり方である。
 そもそも実銃のガバメントクローンメーカーだって親に似せたモデルを作ってはいるが、ものまね王座決定戦で上位に食い込む程度の似せ具合で、決して本物のコルト・ガバメントそのものは作っていなかったのだから、それに習ったとも言える。

 そして言っておかなければならないことは、その某社のエアガンにおけるクローンガバメントやハイキャパシティガバメントより、この王子はよく当たりよく飛ぶのである。そして真冬でもよく働き、掌の温もりだけで確実に作動する。夏場になればその能力を生き生きと発揮し、下手な長物エアガンすら食う実射性能を持つ。

 業界からは離れていたので目の当たりにした訳ではないが、その当時、それこそ瞬く間に各種エアガン競技を席巻してしまったのだという。
 あのグロック26を思い出して欲しい……サバゲのハンドガンといえば同社の92Fかグロックだった時代もあったハズである。そう、それがハイキャパに変わっただけだったのだ。

 今も昔も”使う”のなら東京マルイ一択だったのだ。

うことはなかった。筆者は復帰第一号として王子を娶ることにした。ホモじゃないよ。

 あのマック堺さんだってハイキャパだったのだ。全ての基礎であり、至るべき高みでもあるのだろう。そう思い、とりあえず一緒にグロック18Cもレジに乗せたものの、本命はこの銃とした。(今では少し考えが変わったが追々)

 箱から出し、一番に感じたのは自分自身の成長だった。トリガーに問題なく手が届く。ダブルカアラムの太いグリップにもしっかり小指が回りこむ。金銭的にも問題なく予備マガジンが購入できた。

 悦に浸っている間もなく、今度は時代の流れを感じざるをえなかった。銃の取り扱い、競技のマナー、拳銃の効果的な構え方、競技ステージの攻略法……何から何までインターネットで検索できる時代のことを。マック堺さんを拝見し、こうしてまたエアガンに戻り、ハイキャパを手にすることもなかったのだから。

 いろいろなことが頭を過ぎったが、とりあえずは練習である。
 安価なベルトと、個人的に初心者におすすめなSⅡS社の中型オート用ヒップホルスターを身につけ、そこにハイキャパを収める。

 マック堺さんのホームページに存在するシューティングタイマーを使い、素早い抜き撃ちの準備を始めた。

 YouTube上の様々な動画の見よう見まねでホルスタードロウを試みる。部屋にはたった一人……こんな田舎にマイナージャンルの指導者など存在しない。頼れるのは話半分で聞いた情報と、このハイキャパのみ。


ころで、プロのスポーツ選手ほど初心者に高くてもしっかりした道具を薦めたがる傾向があると思わないだろうか?
 明確な答えは持ち合わせていないが、つまるところ自分の中でノウハウがあるものと同じなら教えやすいという点が一つ。
 そしてこれが大きいと思うのだが、よく出来た道具ほど使用者に自らの正しい用法を促す性能が高いように思われるのだ。
 何が言いたいかというと、人が道具を選ぶのではなく、道具が人を選ぶこともあるのではないか--そういうことである。


イキャパから弾丸を発射するには、亜鉛合金製マガジンにBB弾とHFC136フロンガスを込め、2つのセイフティを突破し、トリガーを引いて、倒れているハンマーを起こして撃針(エアガンの場合はバルブノッカー)を叩かせる必要がある。

 また、ホルスターという第3のセイフティに収まっている以上、そこから取り出し、弾丸を当てるべき標的に銃口を向ける必要性も出てくる。標的でないものに弾丸が当たれば大惨事だ。

 以上を踏まえてネット上の早撃ち動画を見ると、競技者が如何に複雑怪奇なことを異常な速度で行っているか分かるだろう。
 分かっているからこそ筆者はそこに挑戦するのだ。登山家で言うところの山なのである。

 装備も整い、弾丸を込めたマガジンを持った登山者は、同時に購入したプロターゲットの前に立った。
 マガジンをハイキャパに込め、遊底を引いて初弾を送り込み、セイフティを確認した後、ホルスターに収めた。
 もちろん両手は顔の横に上げておく。

 果たして筆者はブザーと共に両手を振り下げ、ハイキャパを掴みにかかった。
 ハイキャパはまるでデートの待ち合わせのごとく、どんぴしゃりと右手に吸いついた。
 勢いのままホルスターから抜き出し、今度は腕を振り上げ、途中で添える左手とも合流し、まっすぐに銃口を標的に向けて運んでいく。
 この時点で銃をしっかりと握ることができていれば、グリップセイフティは安心してトリガーロックを解除してくれている。

 銃口がプロターゲットを捉える!

 トリガーを引く!

 弾丸は発射されない!

 思わず銃を握る右手の親指を見た。グリップの中ほどに鎮座するその無能は、なんともサムセイフティの存在すら忘れてしまっていたのだ。
 そうとも、君の役目はホルスターから飛び出した銃口が標的に向かうまでの間にサムセイフティを説得してトリガーを自由にさせてもらうことなんだよ……。
 筆者はじっと右手親指にそう言い聞かせ、銃をホルスターに戻した。

 もう一度! ブザーが鳴る!

 ホルスターから銃を引き抜く!

 銃口がプロターゲットを捉える!

 トリガーを引く!

 −−パンッという破裂音と共に、ターゲットペーパーに穴が空いた。もちろんど真ん中にではない。
 贔屓目に見ても右上の隅っこ当たりといったところだろう。辛辣に言えば、ターゲットに収まってよかったね、と言ったところである。

 言うまでもなくそんな言葉をかけるのは、この憎っくきふたつのセイフティである。
 一人はしっかりと銃を握ることを求め、一人は発射の直前に合図をかけなければ引金に会うことを許さない。

 つまりハイキャパという気難しい王子は、この二人の召使いを飼い慣らせる使い手を求めているのである。

 王子は使い手に選ばれているのではなく、使い手が王子によって選定されているのだ。


ロックという革命が起きて久しい拳銃業界ながら、不用意でもトリガーを指で引きさえすれば弾が出てしまうその拳銃を、危険極まりないとして忌避する派閥も根強く存在する。
 ガバメントはその派閥の急先鋒である。なにしろたった二つのセイフティを解除するだけで、完全に安全な状態から復帰し、グロックなど目ではないスゥイートなトリガーにタッチして素早く弾丸を発射できるのだから。
 しかも一つは握るだけで解除されるもので、もう一つはグリップしたままでも親指を少し動かすだけで容易に解除できるものなのだ。
 他の拳銃は素直にトリガーを重くし簡単にハンマーを叩けなくした上で、簡単には解除しにくいセイフティを取り付けて安全を確保した。代償として、イザという時に素早く弾丸を発射できなくなってしまった。
 世の中、何にもつけ”程度”というものが大事だが、それを最もわきまえた拳銃こそがガバメントであり、だからこそ拳銃の王様たりえたのである。
 拳銃の王様は安全と素早さというし難い二者を両立させたのだ。


項で、道具は人を選ぶ、と書いた。
 サムセイフティという洗礼を受けた筆者は、それからひたすらセイフティを切る練習をした。それこそ寝る間も惜しんで……体調を崩した時はさすがに寝たが。

 そういえば、世界最強のコンバットオートたるCZ75が世界最強たる所以の一つは、そのガバメントと同一であるセイフティ機構にあった。ちなみにグリップセイフティは存在しないが、その分を多少長いトリガーストローク(引き金の引きしろ)で稼いでいたのだと思う。
 銃の安全管理などあまり知る由も無い当時の筆者は、コックアンドロック……つまりトリガーを引くだけで弾丸が発射される状態を維持したままセイフティをかけられる、という事の重要さを理解していなかった。

 つまりサムセイフティに苦悩する現在の姿は、過去のツケなのである。

 確かにもっと早い段階で競技射撃に目覚めていれば様々なことが容易だったろう。セイフティが何のためにあるのか知ることもあったろう。
 年少の頃は暴発など日常茶飯事だったし、銃撃戦という合意の場以外ですら意味もなく他人に撃たれたし、このエアガンで競技をするなど知る由もなかった。
 ”撃つべき時を除き必ずセイフティをかけるべし”という銃の取り扱いの基本すら、共に遊ぶ誰もが本当の意味では身についていなかったのだ。
 競技射撃では銃の取り扱いが正しく出来ることが「当たり前」である。ルールでそう定められているのだから、身についていなければスタートラインに立つことすら出来ない。

 しかし全ては後の祭りだった。だが、もう一度、終わった祭りを始めることはできるだろう。

 時間の貴重さを意識できる現在だから、日々取り込み続ける知識と、短時間であっても積み上がった練習こそが、自分自身を助けることを身を持って感じられるのだ。
 ちなみに現在では特に問題もなくセイフティは解除できるようになったことを付け加えておきたい。成長は出来ているーーこの銃のお陰で。

 ”拳銃の王子”は人を選び、人に教え、人を作るのである。

 達人・マック堺さんのみならず、多くのエアガン競技者が、東京マルイ ハイキャパを薦める理由は、恐らくたったそれだけなのである。

 性能や安さだけではなく、競技者として、エアガンユーザーとして、本当に大事なことを”拳銃の王子”は教えてくれるのだから。


 だから、これから筆者のように、この道を歩みたいというエアガンプレイヤーにオススメするのは、やはり”拳銃の王子”なのである。


 感謝
  


Posted by 440BB  at 02:00Comments(0)エアガンレビュー

2016年05月01日

早撃ち競技を始める

 ようつべ(YouTube)の影響で、またエアガンで遊び始めた。(10年ぶり3回目)

 ええと、キッカケは以下の動画である。とりあえず見て欲しい。



 見ての通り、ただおっさん(失礼)がエアガンで的撃って遊んでるだけなのだが、奥が深いのだ。

 第一、普通の人をどっかから連れてきて、同じ道具を持たせて、やって見せろとやらせても、とてもこの調子ではできない。

 要するにこれはスポーツなのだ。



 元になっているアメリカの(言うまでもなく銃といえば米国である) 『Steel challenge』は音もすごくて迫力がある。

 エアガンの『スティールチャレンジ』の場合はそこまで迫力はないものの、目にも留まらぬ速さで打つのでそのテクニックが見所。

 そしてそのテクニックを身につけた俺Kakeeeeeeeee!!が醍醐味のひとつでもある。

 ちなみにふたつ上のおっさん(失礼)は、上のおっさん(失礼)をやっつけて世界一になったすごい人だ。

 上のおっさん(失礼)こと、マックス・ミッチェルさんは数々の拳銃競技を総ナメにした経歴を持つ凄腕の射撃競技者なのだが、ふたつ上のおっさん(失礼)こと、マック堺さんは実物の拳銃すら存在しない(ことになっている)日本からアメリカに行って、ほぼエアソフトガンの技術とトレーニングだけで彼含む並み居る強豪を超える結果を出し、本場で優勝を成し遂げたのだ。

 いわゆる業界の伝説の人なのである。

 それを踏まえた上で両方の動画を見比べると、エアガンでのスティールチャレンジもカッコ良く見えてきませんか。

 マック堺さんは他にも動画を上げていらっしゃって……というか日本人ではそうそうない世界チャンピオンなのにも関わらず、今では単なるオモチャレビュアー(度々失礼)状態なのだが、多種多様なエアソフトガンを取り上げ、それらの様々な遊び方も紹介してくださっている。
 (鉄琴を撃って音楽を演奏するというのが朝番組で取り上げられたこともあるそうな)

 もちろんその中でのスティールチャレンジなのだが、他にサバイバルゲームや精密射撃もあるのに、お前が始めたのはなぜにコレなのかというと、見た目の格好良さの他にも、場所の制約、人数の制約、使用する道具の制約が最もユルイからである。

 他にも理由は色々あるが、それは後々書くとして、まずはこの三点から別の遊び方と比較してみたい。

 例えば、サバイバルゲームいわゆるサバゲーだと、極少数であってもせいぜい4人はいないと成立しない。
 まずチーム分けが成立しないし、敵が少な過ぎてスリリングではないからだ。開始2分で終わっても楽しくなさそうだ。
 逆に数百人規模で行われる全国規模のゲームもあるが、終了するまで1時間以上かかることもあるそうな。
 そうなるともう遊んでるのか仕事なのかわからないほどの苦行である。1時間走り回るなんて想像したくない……。
 しかし体力があれば勝てるというものでもなく、重要なのはコロコロ変わる状況に即した適切な行動である。
 それに仲間を集める交渉能力と人見知りしない度胸も必要になるだろう。そこら辺が個人的には非常に難しいのだが……。
 またゲーム内容を充実させるために装備を揃えていくと、軽く中古の自動車が買えてしまう値段に到達すると聞く。
 快楽を追求するためにコスプレ要素を高めていくと、エアガンを撃つだけでない技能も必要になってくる。

 精密射撃はそれに比べておとなしい。道具を完璧に揃えても10万円いかないかといったところだろう。
 サバゲーには猛練習もないが、精密射撃は家でたくさん練習できる。広い家ならなお良い。最低でも2mあればできるという。
 それに練習でも大会でも射場に立つ時はひとりだ。故に出来のいい人柄は必要ないし、撃ったらとっとと立ち去れる。
 故に完全に個人的な満足を追求する状態になる。挨拶程度のコミュ能力は必要だが、最低限それだけあればいいとも言える。
 むろん認定された競技のため順位はつくけれども、個人的な問題として、結果が2位や200位でも満足というなら問題ない。
 逆に言えば、1位でなければやる意味がない、という向きにとっては恐ろしくストレスの溜まる遊びになる。
 また競技の際に、なるべく銃を動かさない方が良い結果が出るという性質上、体力的には楽だろう。
 ブレて動くような奴は失笑を買うだろう。精神的に弱い人間の動じやすい脆い心が、ダイレクトに的の結果に反映されてしまう。
 明鏡止水というか禅の境地というか、身体どころか心まで”不動の境地”に踏み込まねば勝てないストイックな世界に見える。

 このように、両者を比較すると面白いくらい対局なのだが、この両方を趣味としている方もいるというから世の中は恐ろしい。

 個人的には、この両者の中間点、ちょうどいい塩梅を持っているのがスティールチャレンジ等の早撃ち競技だと感じた。

 多くの仲間を作る必要もなく、またひとりぼっちで禅僧のように耐える必要もなく、何より道具を揃え易そうだったから。

 必要な道具はその辺のエアガン(自動で装填されるタイプでないと無理だが)と専門ショップに行けば買える程度のホルスターとアウトドアで使うような分厚く太いベルトだけである。
 専用の的を入手して、ホームセンターで売っている園芸ポールやイレクターパイプにつけてステージをセットするとなお良い……と書いたものの、別に撃つ的は空き缶や自作したプラ板やメーカー製の別用途のやつだって良いのだ。

 また実際にBB弾を発砲しなくても、ホルスターからの抜き撃ち練習をするだけでもメキメキ上達していく。部屋でもできる。
 慣れないと1ステージを1度撃つ(1ランという)だけでも10秒くらいかかるが、それにしたって6回撃って1分である。

 そう、この遊びは、極めて短時間で遊び終えられるのである。すなわちスキマ時間でも遊べて練習できるというワケ。
 ここが重要だ。
 据え置きゲーム機が衰退してスマホゲームが台頭してきたのも「短時間で遊び終えられるから」だという。
 それに対する拘束時間が短いというのも、いい意味でも悪い意味でも魅力のひとつと言えるだろう。
 ちなみに「アンポンタン」という言葉の語源は 安い ポンと 短い だそうだが(ウソ)、エアガン遊びでここまでアンポンタンなのも他にないのである。

 しかし断っておくが、気軽に始められるから気楽にやれるというものでもない。ネガティブな点も多い。

 毎年行われる全国大会はかなりレベルの高い勝負であり、ルールやマナーも厳しく定められており、ぶっちゃけ今日道具を買った人が気軽に行ける場所ではない。
 またご存知の通り非常にマイナー競技のため、競技場所に行くのも一苦労である。大抵は主要都市部や首都圏で行われる。
 さらに言えば、拳銃という『人殺しの道具』を遊びに使う為、一般ピープルから白い目で見られる。いかにマナーを守ろうともこれだけは避けられない。
 このブログをまともに読むような方は既にある意味で世間に背を向けたオタクであろうから苦痛は少ないだろうが、いま現在一般ピープルだという方もしくは青少年が始められるという場合は、せめて家族の理解を得てから始められるのがいいかと思う。
 あのアメリカですら銃アレルギーな人がいて、所持者を見るだけでも激しく糾弾するというので、ここは神経質な問題だ。本場でこれなのだから日本では一体何人いるだろうか。
 つまるところ、始める分には気楽なのだが、楽しむために本気でやるには……家で練習するだけでもそれなりの覚悟が必要ということだ。

 また始めてみてわかったことをいくつか書いていくと……まず、前項と矛盾するようだが、これが意外とお金がかかるのである。

 スポーツ全般に言えることだが、ランニングコストというやつ。弾丸1発を発射するのにかかるお金である。
 BB弾1円、ガスガンのガス数円、メンテナンス費用一回数十円。電動であればガス代が電気代となりかなり浮く計算。
 仮に1日に何度も練習するようなら数百円〜千円程度かかると思っていた方がいいだろう。学生のように暇なのにお金はないという向きは地獄である。

 また始めに買う道具の値段もバカにならない。ほぼ18禁(条例で定められている)なのだが、ポンと買えるのは大きいお友達(おっさん)くらいだろう。

 まず銃本体が数千円〜数万円、ホルスター数千円、推奨される競技用ベルト数千円、ガス二千円、BB弾数百円〜数千円、それら一式を持ち運ぶバッグ数千円とこれらを集めていくと、始めるのには安く安くで最低でも三万円程度かかることが想像できるだろう。

 最近の学生のお年玉レートが何万円かは不明だが、他に趣味や付合いがあるならほぼ無理だろう。全てをかなぐり捨てる必要があるかもしれない。
 もちろん親御さんの援助もあり年少ながら競技に励んでいる青少年もたくさんいらっしゃるが、スポーツマン二世のような幸運の持ち主というだけである。
 とにかく他のスポーツと似たような感じで、ちゃんとしたいがためにちゃんとした道具を揃えると、とにかくお金がかかりますよというのが一点。

 また、以外と?身体のコンディションや精神面がかなり結果に反映される。

 時間が取られないからとムキになって練習しまくると、まずホルスターから銃を抜く利き手がやられる。正確に言えば肩が。次に銃を支える手首に違和感を覚えると思う。その次は肘とくる。
 意外かもしれないがキチンと基礎通りに銃を構えると全身の筋肉が疲労するのだ。
 生まれてこのかた鉄砲など一度も撃ったことのない人なら、基本動作で撃ち続けるだけでも相当疲れるのではないだろうか。
 的と銃の照星を合わせる(サイティング)も、個人の静止及び動体視力が試される上、目の疲れは脳の疲労につながるということもある。
 また、的と的の間を、銃を振って動かすというのも、やってみればわかるが足腰の筋肉を使う。日に何度もやっていればそれなりに疲れるだろう。

 それに、何よりも、より良い結果を求めていけば、自ずと「あたま」を使っていくことになる。
 技術というかテクニックのみならず、的を撃つ順番の組み立て、脳内イメージを反映させる実際の身体の動かし方……。
 いうまでもなく集中力も必要で、早く早くと焦ってもいけないし、その逆も然り。やればわかるがびっくりするほど当たらない。
 それらを含めて、こうやってこうする、という頭の中だけでわかっているものを実際に身体を使ってやってみるというのは頭も使うものだ。
 スポーツもプロ選手のコメントは非常に頭脳的である。早撃ち競技とてその例に漏れるワケではない。世の中全てのことに言えるのだが、とにかくバカには難しい。
 だからこそ、競技に出て結果が出ると、ああ自分はバカではなかったのだな、とか、この程度のバカで済んだ、とわかるので、そこが醍醐味でもあるだろう。
 かくいう筆者はまだ競技不参加で、自分がどの程度バカなのかわからないのだが。今が一番幸せかもしれない(笑)。

 故にサバゲーほどではないにしろ、早撃ち競技……スピードシューティングとは、いい意味でも悪い意味でも精神的にも『大人の遊び』である。


 ……つらつらと始めた理由と面白さなどについて書いてみた。長くなるので(すでに長いが)他のはこの辺で。

 何にしろ、おはなしは簡潔であるに限る。だが見ての通りそうはならないので、人間には才能以前に努力が必要なのだ。
 次はその努力について……要は競技に向けた練習やその他がどのくらい面白く楽しいのかどうか書いていきたいと思います。

 感謝。
  


Posted by 440BB  at 00:01Comments(0)スティールチャレンジ